いっそのことパブコメでは「キャッシュ」という言葉を使わない方がよいのではないでしょうか?

要旨。「キャッシュ」という言葉は、広い意味を持つ言葉になってしまっているので、議論が混乱したり誤読されることを避けるために、今回のパブコメでは使わないことを推奨したい。

実際のところパブコメ関連の話題はほとんど追っかけてない上、とどめに本題である「キャッシュ」という言葉に関する論争もウォッチしていた当時の記憶がさっぱりないので勉強中……したがいまして、こういうことを書く資格はないのですが。

以下本文。

はてブ経由で「僕があまり歓迎しないパブリックコメントの類型(1)「キャッシュは複製だ」 - ものがたり」を読んで、ちょっと混乱しました。(以下、意見そのものに対して賛成反対とかいうのではありませんことをご了承ください)


だがまあ、僕が個人的に思うことは書いておきたい。最初の例(まあ最後になるかもしれないけど)は、「YouTubeみたいなキャッシュは複製だが、そこまで違法化するというのには反対」みたいに主張してしまうことだ。

YouTubeみたいなキャッシュ? YouTubeのキャッシュっていうと負荷分散か何か? どっかの検索エンジンが動画までキャッシュするようになったのか? …という具合に。

結局、リンク先の9月27日の日記「キャッシュをTemporary Internet Filesから」という言葉を見て、「ブラウザ(IE)のキャッシュ」を意味するのだとわかりました。

こんな混乱をする人は少ないかもしれませんが、これを機会に考えてみました。私の思いつく限りでは、「キャッシュ」という言葉は下記のように複数のものに対して使われ、その意味もさまざまです。

  • CPUの「キャッシュ」メモリ
  • HDDその他に対して、PC本体やドライブ側で持っているディスク「キャッシュ」
  • DNSにおける「キャッシュ」サーバ
  • Squidなどプロキシサーバ・ウェブキャッシュサーバの持つ「キャッシュ」
  • ブラウザの「キャッシュ」
  • Googleなど検索エンジンが用意している「キャッシュ」
  • ウェブ魚拓などが生成する「キャッシュ」
  • Internet Archiveに保存されている「キャッシュ」

ウェブ魚拓は最近はQ&Aにあるように「引用」と「キャッシュ」を明確に分けて扱っているようです(かつてはここまで明確にしていなかった記憶があります)。また、Internet Archiveにあるサイトのスナップショットを「キャッシュ」と呼ぶ人もそれなりにいるようです。

文中では「一時的蓄積」を「キャッシュ」として話を進めているように読めます。ですが、Internet Archiveにあるものを「キャッシュ」と呼ぶ人々にとっては、その前提は成り立ちません。Internet Archiveはサイトのスナップショットを一時的でなく恒久的に保存するからです。ウェブ魚拓についても関連するはてブやそのコメントを見ると「キャッシュ」という言葉に、恒久的な保存という意味を込めている人が散見されます。

したがって、「キャッシュ」とは結構面倒な言葉なのです。文脈から意味が定まるのならいいのですが、個人的には既に言葉だけが飛び回って、都合よく解釈されてしまってるように思います。ま、「文脈から意味なんて判断できるだろ。そんなのてめえの杞憂だよ。m9(^Д^)プギャー」と誰かが言って下さればそれでよいのですが。

次に、「キャッシュ」という言葉については結構前に話題になっていたことを思い出したので、ぐぐってみました。高木浩光@自宅の日記さんの記事ですので皆さん一度は読んだことがあるはずです。

これに関連して児童小銃さんが下記の記事を書かれました。

さらにトラックバックをたどればまだまだあるのですが、日記を書く体力が切れてきたのでこの辺で止めます(ごめんなさい)。当時の記憶が薄れてるので、わたしはもう一度読み直そうと思います。

今の段階では、表題を見るだけでこの問題は根が深いように感じられます。

なんだか発散してきたのでまとめてしまいます。

(既に決着済みだったりすると恥ずかしいのだけれど)いずれ、「キャッシュ」について白黒をつけるときが来るのかもしれないけれど、今回やる予定でないなら、「キャッシュ」という言葉を使わないことで、「キャッシュ」論争に力を奪われずにすむではないかと思いました。

それに、やっぱり「キャッシュ」という言葉は話す人聞く人によって異なる意味を持つ言葉になってしまったので、それを使わずに説明を書いたほうが、誰が読むのかわからないパブコメでは誤解を生むことが少なくなるはずです。